地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、和歌山の地域情報サイト「まいぷれ」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

和歌山の地域情報サイト「まいぷれ」和歌山市

イチオシ情報

和歌山にゆかりある巨匠・楳図かずおの作品を読もう!

橋本駅前で「グワシ」をするまことちゃん
橋本駅前で「グワシ」をするまことちゃん
楳図かずおさんは和歌山県生まれ、奈良県育ちの漫画家です。高野山で生まれ、五條市で育ち、青年期には五條市から橋本市までをお決まりの散歩コースとしていました。また、雑誌デビュー前には橋本市の広報誌に4コマ漫画を描いたこともあります。

このように和歌山と浅からぬ御縁がある楳図かずおさんの代表作『まことちゃん』の主人公・沢田まことの像が、橋本駅前に2002年から建っています。みなさんはもうまことちゃんと会いましたか?

楳図かずおのことを知ろう!

楳図かずおさんと言えば、赤と白のボーダー!
楳図かずおさんと言えば、赤と白のボーダー!
和歌山と縁が深い楳図かずおさんの作品を、和歌山のみなさんはもっと読みましょう! 本稿では楳図さんの作品について改めてご紹介します。未読の方はこれを機に楳図作品を手にしてみてください。

楳図かずおさんは1966年に『週刊少女フレンド』(講談社)に連載した『へび少女』などのホラー漫画が人気を博し、一躍人気作家となりました。しかし、これ以前にも貸本漫画家として活動していて、その頃に自ら「恐怖マンガ」という言葉を生み出したのでした。

いまでこそ「ホラーコミック」などの言葉がポピュラーに使われていますが、楳図さんが「恐怖マンガ」という言葉を使い出すまでは、怖い漫画を表す言葉がなかったのです。その面でも楳図さんは先駆者です。

その後も『赤んぼ少女』や『猫目小僧』などのホラーを描き、1976年、それから一転して爆発的なギャグ漫画『まことちゃん』を大ヒットさせます。『まことちゃん』は1970年代後半の漫画界を席巻したギャグ漫画の代表とも言える作品だけに、「楳図かずおの代表作」と呼ばれることも多いです。

楳図さんは1995年に完結した『14歳』以降は休筆されています。デビューから休筆までに描かれた作品の中から、まだ楳図作品に触れたことがないという人向けに「楳図かずおと言えばこれ!」という作品を3作、選んでご紹介します。

高野山の静謐な街並みや五條市から橋本市への道々で思ったこと、考えたことなどが、いつしか楳図さんの意識に残り、そういったものがどこかに反映されているかもしれない作品たちです。

楳図かずお作品おすすめ3選

ここでは楳図かずおさんの代表的な作品を3作、ご紹介します。ご存じの作品、知らなかった作品があることと思いますが、まだ楳図作品にふれたことがないという方は、ひとまずふれてみてください。

おろち

『おろち』(c)楳図かずお/小学館
『おろち』(c)楳図かずお/小学館
1969年~1970年「週刊少年サンデー」(小学館)連載。楳図漫画初期の傑作です。人間の中に潜む怖さが独自の視点とうつくしい筆致で描き出されます。

楳図かずお作品はホラー漫画の中でも特に怖いと言われています。それは、グロテスクな描写や驚かせる演出による表面的なものではなく、人間の奥に隠されたしたたかさや残虐さを浮き彫りにし、真の怖ろしさを描いているからではないでしょうか。

【あらすじ】
主人公は不思議な能力を持つ美少女。名は「おろち」です。彼女は老いることがありません。行く先々で悲壮な運命に見舞われた人々と出会い、彼ら彼女らの生きてゆくさまを見つめます。おろちが出会うのは9つの運命。

第1の話の中心となるのは、17歳と16歳のうつくしい姉妹です。嵐を免れようと立ち寄った屋敷で彼女らと邂逅したおろちは、18歳になることを異常なほど恐れる姉妹の謎を知ることになります。

漂流教室

『漂流教室』[文庫版](c)楳図かずお/小学館
『漂流教室』[文庫版](c)楳図かずお/小学館
1972年~1974年「週刊少年サンデー」(小学館)連載。実写映画やテレビドラマにもなった近未来SF作品。極限にいる人間の心理とそれによって引き起こされる事件が描かれます。


【あらすじ】
大和小学校6年生の高松翔は、朝の出がけに母親と喧嘩をしてしまいました。その日の授業中にはげしい地震が起こります。大きな揺れはすぐにおさまりましたが、学校の外が岩と砂漠の荒涼とした世界になってしまいました。突然の異変に校内はパニックに陥り、教師たち大人は互いに疑心を抱き、早いうちに全員が亡くなってしまいます。

やがて学校の外の世界が、文明崩壊後の未来の世界だと知った翔たち小学生は協力し合って、学校を中心とした「国」を築いて生き延びようとします。しかし、飢餓や未知の世界への恐怖心、小学生同士の対立、伝染病など、次々と困難が襲ってきます。荒廃した未来の世界で翔たちは生き延び、また素の世界へと帰ることはできるのでしょうか。

まことちゃん

『まことちゃん』1巻(c)楳図かずお/小学館
『まことちゃん』1巻(c)楳図かずお/小学館
1976年~1981年「週刊少年サンデー」(小学館)連載。1980年に劇場用アニメーションが公開されています。「グワシ」、「サバラ」、「ギョエー」などのギャグや「まことちゃん語」は当時の流行語にもなりました。ギャグ漫画の金字塔。


【あらすじ】
怒濤の幼稚園児・「まことちゃん」こと沢田まことは前髪パッツンのおかっぱ刈り上げヘアで、いつも元気で素直なよい子(のつもり)です。常に鼻水を垂らしていて、鼻水を使って虫を捕まえてしまいうことも。よく使う語尾は「なのら」に「れ~す」、五指を開いた状態から中指と小指を折り曲げる「グワシ」ポーズが得意。

いたずら、下ネタ、踊りも一級品。パパリン(父)、ママリン(母)、ミカリン(姉・美香)、ジジリン(祖父)、ババリン(祖母)、そしてメチャ(猫)の家族とともに、まことちゃんは騒動とギャグの嵐を巻き起きします。機関銃のようなギャグの連打に、笑いすぎて息ができなくなることも?!

漫画だけではない楳図かずお!

丁寧でうつくしい描線、人間の心理を巧みに刺激するストーリー、時代を捉えたテーマなどで優れた作品を生み出す楳図かずおさんですが、活躍の場は漫画だけではありません。音楽活動をしていたこともあり、映画『まことちゃん』のテーマ曲は自身で作詞し、歌っています。

また、歌詞をほかのアーティストに提供したこともあります。郷ひろみさん「寒い夜明け」、近田春夫さん「ああ、レディハリケーン」、テレビアニメーション「アンデス少年ペペロの冒険」の主題歌「ペペロの冒険」など、記憶に残っている人も少なくないのではないでしょうか。

ほかにもたくさん、楳図かずおの魅力

楳図さんのボーダーの「赤」は、高野山大門の色からイメージされているという話も。
楳図さんのボーダーの「赤」は、高野山大門の色からイメージされているという話も。
本稿でご紹介した以外にも、楳図かずおさんはたくさんの作品を描いておられます。『洗礼』、『恐怖』、『わたしは真悟』、『神の左手悪魔の右手』……いずれも1970年代~1990年代に描かれたものですが、そんなにも以前に描かれたとは思えない、時代を先取りした思考と題材、そこから生み出されるストーリーにみなさん驚くことでしょう。

郷土に縁ある巨匠の作品を体験してそのすばらしさを知り、そして誇ってください。。近頃は電子書籍という便利なものもあり、作品を手に取ることもしやすくなっています。これをきっかけにぜひ楳図かずおさんの作品をお読みください。