和歌山の歯科医院特集
(更新)
なかにし歯科医院のマネージャーで歯科衛生士の奥出さんに詳しくお伺いしました!
最近、「食事中に“むせる”ことが増えた」「口の中が乾きやすくなった」と感じることはないでしょうか。
こうした変化は、加齢とともに少しずつ進んでいく口腔機能の状態と関わっているといわれており、口腔機能を維持することは、誤嚥性肺炎をはじめとした様々な身体の変化と向き合ううえでのひとつのポイントとして知られています。
誤嚥性肺炎と聞くとご高齢の方だけの話と思われがちですが、口腔機能の低下は年齢を問わず少しずつ進んでいくものだといいます。今回まいぷれ編集部では、地域で口腔ケアに取り組む『なかにし歯科医院』を取材し、マネージャーで歯科衛生士の奥出さんに、誤嚥性肺炎と口腔機能の関係について詳しくお話を伺いました。
ご高齢のご家族がいる方はもちろん、将来のために今から口腔機能を意識しておきたいという方にもぜひ読んでいただきたい内容です。
誤嚥性肺炎は、嚥下機能に何らかの障害がある方に起こる、あるいは口やのどの中にある内容物が誤って気道に入り込んでしまうことによって発症する肺炎の一種とされています。主な原因は、唾液や食べかすに含まれる口腔内の細菌を含んだ分泌物が誤って気道や肺に入り込んでしまうことだといわれています(※1)。
なぜ今、この誤嚥性肺炎について知っておく必要があるのでしょうか。
実は日本では、80歳以上の方における死因の第3位が肺炎であり、80歳以降の各年代で肺炎による死亡が全体の1割を超える割合を占めているというデータがあります(※2)。また、誤嚥性肺炎による死亡率は、誤嚥を伴わない一般的な市中肺炎と比べて高い傾向にあるとも報告されています(※3)。

こうした誤嚥性肺炎は、「唾液・口腔内の病原微生物の量」「誤嚥の発生」「免疫機能の低下」という3つの要因が、互いに重なり合って発症するものと考えられています(※2)。誤嚥や細菌の侵入等、どれか1つではなく、様々な要因が重なった時に発症しやすくなるということです。
このうち、口腔機能の維持と関わりが深いのが、誤って気道に入り込んでしまう「誤嚥の発生」の部分です。噛む力・飲み込む力・舌の動きといった口腔機能が低下すると、食べ物や唾液がうまく飲み込みきれずに口の中やのどに残りやすくなり、また、むせるという体の防御反応そのものも弱くなっていくとされています。
その結果、本来であればむせて押し戻せていたはずのものが、気づかないまま気道の方へ流れ込んでしまいやすくなるのです。
さらに、唾液には口の中を洗い流し細菌の増殖を抑える働きがありますが、噛む力や飲み込む力が落ちると、この唾液による自浄作用が弱まり、結果として口の中の細菌が増えやすくなるとも指摘されています(※3)。
つまり、口腔機能を保つことは「口腔内の清潔を維持すること」にも「誤嚥の防止」関わっているとされ、この両面から誤嚥性肺炎のリスク低減に寄与しうる可能性があると考えられています。
こうした背景から、口腔機能の維持が誤嚥性肺炎のリスク低減に寄与しうるという考え方が、医療・介護の現場でも広がりつつあります。
なかにし歯科の奥出さんによると、現在、口腔機能の中でも特に問題視されているのが「舌低下」という状態だそうです。
奥出さん:
「今かなり問題になっているのが舌低下です。歯科医院としては、舌低下を防ぐことで誤飲のリスクの低下、ひいては誤嚥性肺炎の予防に役立つ可能性があるということをお伝えしたいと思っています」
舌低下とは、本来あるべき位置よりも舌が下がってしまっている状態のことを指します。奥出さんは、自分自身の舌の位置を意識したことがある人は意外と少ないのではないかと話してくれました。
奥出さん:
「『舌の正しい位置をご存知ですか?』という聞き方をよくします。正しい位置は、上の前歯の裏側あたりにぺたっとくっついている状態です」
また、日常の中で気づきやすいサインとして、次のような点も挙げてくださいました。
これらは、いずれも歯科医院での検診でも確認できるポイントだと言います。
意外に思われるかもしれませんが、奥出さんは「むせている間はまだ安心できる状態」だと話します。
奥出さん:
「むせているうちはまだ大丈夫なんですけれども、むせなくなったらそれだけ口腔機能が低下している可能性が考えられます。
むせるという反応は、誤って気道に入りかけた食べ物や唾液を体が反射的に押し戻そうとするサインです。この反射がうまく働かなくなると、気づかないうちに唾液や食べかすがのどの奥に溜まったままになり、何らかの拍子に気管の方に入ってしまうのです。寝ころんだ際は食道と気管が開いたままの状態になるため、特に就寝中などに気道へと流れ込みやすいとされています」
さらに、『むせなくなる』という状態の背景には加齢による嚥下機能の低下だけでなく、姿勢も影響しているそうです。日頃から、特にストレートネックなどのような姿勢の崩れにも意識を向けることが大切だと奥出さんはいいます。
なかにし歯科では、口腔機能の維持・向上のために、次のような取り組みを行っているそうです。

奥出さん:
「舌を上あごにぺたっとくっつける訓練や、今はアプリで運動ができるものもあるので、ぜひ皆さんに探してやってみていただけたらと思います。日常生活の中で無理なく取り組める習慣として取り入れることが大切です」
定期的な来院によって、自分では気づきにくい舌の動きの変化を客観的に確認できることも、口腔機能を維持するうえで重要なポイントだと言います。
口腔ケアと誤嚥性肺炎の関係については、これまでにいくつかの研究が行われていますが、研究によって結果には幅があり、効果の程度は限定的とする報告もあります。
日本国内の全国11か所の特別養護老人ホームで行われた研究では、毎食後の日常的なブラッシングに加えて、歯科医師・歯科衛生士による週1回の専門的な口腔ケアを2年間継続したところ、肺炎の新規発症・肺炎による死亡・発熱者の割合が、いずれも実施していない群と比べて少なかったという結果が報告されています(※5)。
一方で、嚥下障害のある方を対象とした口腔ケアに関する複数の研究をまとめたレビューでは、口腔ケアによって誤嚥性肺炎そのものが減少するというエビデンスは「限定的」にとどまるとも報告されています(※6)。そのため、口腔ケアを行えば誤嚥性肺炎を確実に防げるといった断定的な捉え方ではなく、口腔機能を良好に保つことが、誤嚥性肺炎のリスク低減に寄与しうる1つの要素であるという理解が、現時点でのエビデンスに沿った考え方だといえそうです。
また、脳卒中の既往がある高齢者を対象とした研究では、食べかすの残り具合や、歯の噛み合わせの状態といった口腔機能が、誤嚥性肺炎の発症と関連していたという報告もあります(※7)。舌の力(舌圧)についても、嚥下時の舌圧が低い方ほど誤嚥性肺炎との関連が見られたとする観察研究があり(※8)、口腔機能の状態を日頃から把握し、適切なケアを行うことが将来的な予防へとつながるといえそうです。

誤嚥性肺炎は、高齢になってから突然起こるものというよりも、日々の口腔機能の変化の延長線上にあるもの。舌の位置を意識する・自身の身体の変化に気づく・定期的に歯科医院でチェックを受けるといった小さな積み重ねが、将来のリスク低減につながる可能性があります。
なかにし歯科医院の奥出さんは、今回の内容について、高齢者だけでなく現役世代の方にも「自分ごと」として受け止めてもらいたいとお話してくれました。ご家族に高齢の方がいる場合はもちろん、まだ症状を感じていない方も、この機会に自身の舌の位置や普段の食事の様子を振り返ってみてはいかがでしょうか。気になる症状がある場合は、早めに歯科医院や医療機関へ相談することをおすすめします。
【参考文献】
※1 口腔咽頭嚥下障害患者に対する口腔保健介入の効果/Remijn L, Sanchez F, Heijnen BJ, Windsor C, Speyer R. Effects of Oral Health Interventions in People with Oropharyngeal Dysphagia: A Systematic Review. J Clin Med. 2022;11(12):3521.
※2 長期介護を必要とする高齢者における誤嚥性肺炎予防のための唾液細菌増殖抑制のための口腔ケア戦略/Funahara M, Sakamoto Y, Funahara R, Soutome S. Oral Care Strategies to Suppress Salivary Bacterial Growth for the Prevention of Aspiration Pneumonia in Older Individuals Requiring Long-Term Care. Cureus. 2025 Aug 20;17(8):e90547.
※3 高齢患者における肺炎の包括的な管理/Putot A, Garin N, Rello J, Prendki V. Comprehensive management of pneumonia in older patients. Eur J Intern Med. 2025 May;135:14-24.
※4 口腔ケアは介護施設に入居する高齢患者の肺炎を軽減する/Yoneyama T, Yoshida M, Ohrui T, et al. Oral care reduces pneumonia in older patients in nursing homes. J Am Geriatr Soc. 2002 Mar;50(3):430-433.
※5 高齢脳卒中患者における誤嚥性肺炎の発生率と再発:口腔衛生と機能状態/Hombo A, Kato K, Jokaji-Ishimiya M, Kobayashi Y, Hase T, Kawashiri S. Aspiration Pneumonia Incidence and Recurrence in Elderly Stroke Patients: Oral Hygiene and Functional Status. Int Dent J. 2025 Dec;75(6):103902.
※6 嚥下時の舌圧は、中高年および高齢の入院患者における誤嚥性肺炎の独立した危険因子である:観察研究/Chen YC, Ku EN, Lin CW, Tsai PF, Wang JL, Yen YF, Ko NY, Ko WC, Lee NY. Tongue pressure during swallowing is an independent risk factor for aspiration pneumonia in middle-aged and older hospitalized patients: An observational study. Geriatr Gerontol Int. 2024 Mar;24(Suppl 1):351-357.
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

「むせやすい」は気になるサイン?!なかにし歯科に聞く、誤嚥性肺炎と口腔機能の関係
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