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キラリ☆和歌山人

アートで大人も子どももハッピーに!『佐竹幸さん』

今回のキラリ☆和歌山人は、人々の集いに風穴を開ける仕事人、ハッピー連鎖の風を起こす!art home FURARI代表の佐竹幸さんです。

2020/05/15

 ある時は、芸術をこよなく愛するパステルアートやアートTシャツ教室の講師、またある時は鯛の被り物を被り加太の魅力をアピールする仕事人、またある時は、銀塗りと銀色衣装で宇宙人になりすまし地域カラオケ大会を盛り上げるムードメーカー。だけど、本業は年頃の二男を持つ母、佐竹幸さん。「大人も子どももハッピーに!」そんな幸せの風を、生まれ育った加太から全国へと巻き起こす不思議な人物像に迫ります。
 今、加太は町おこしが盛んに行われています。その数あるイベントの顔ぶれの中に、様々なアートイベントを行っているart home FURARI(アートホームフラリ)代表の佐竹幸さんがいます。佐竹さんの周りにはたくさんの大人や子どもがいて、みんなとても楽しそう。たくさんの人を巻き込んで、一体どんな活動をしているのか、何を目指しているのか取材しました。

佐竹さんの普段の活動

佐竹さんの夏のビックイベントはTシャツアート祭。参加する大人や子どもが無地のTシャツに染料で自由に絵を描き、世界に1つだけのオリジナルTシャツを作ります。自宅を開放したり、子ども会のイベントや自治会館などでしたりすることもあるそうです。
 
地域の子ども会での「Tシャツアート教室」
地域の子ども会での「Tシャツアート教室」
大人は特に指示をせず、子どもは自由な発想で絵を描きます
大人は特に指示をせず、子どもは自由な発想で絵を描きます
 最近はお年寄りの参加者が増え、指の感触を楽しみながら自由に絵を描くパステルアートというイベントが増えています。短い時間で簡単に仕上がり、しかも指の感触が心地よく、五感を刺激するアートとして今注目されているそうです。
パステルアート教室
パステルアート教室
 また、コロナ禍による外出自粛により、自宅で多くの時間を過ごす子ども達の為に、未来の地球の輪アートプロジェクトを考案。こんな未来の地球になったらいいなというテーマで、SNSを通じて子ども達に絵を募集しました。希望が詰まったたくさんの写真が集まり、それらを繋げて1つの動画を作成、テレビや新聞でも話題になりました。


 最近は新たに次男の風楽(ふら)さんと動画配信を始めたという佐竹さん。親子の日常など様々な事を話題にオンライン動画を配信、時には風楽さんが歌やウクレレを披露する事もあるそうです。またプライベートでは二男のお母さん、しかも小学校のPTA会長も務め、チームをまとめる役割をしています。家の外での活動と、母・主婦としての家の中での仕事に大忙しの佐竹さんです。

人とのつながりを大切にしてきた佐竹さんの「生い立ち」

 「生まれた時からいつも海があって、加太の祭りを通して、おばちゃんやおいやんとの昔ながらのつながりが私の中に根強くあるんよ。(佐竹さん)」

 加太出身の佐竹さんは、父が漁師、祖母は磯ノ浦で海の家を営んでいました。夏休みは毎日のように祖母の海の家へ行き、接客業を手伝う事が楽しかったそうです。小さな頃から生活の傍らには海があり、慣れ親しんで育った海は佐竹さんにとっては昔も今もかけがえのないものでした。海を取り巻く人々との縁は今でも大切なものだそうです。現在でも加太の祭には必ず参加、世代を問わず昔から長い付き合いの人達の中で祭を盛り上げています。

転機になった「子育てでのつまづき」

 大阪デザイナー専門学校卒業、花屋勤務を経て結婚。第1子を出産しますが、佐竹さんの転機となる「子育てのつまづき」の時代が来ます。
 「自分の子はどうして普通と違うんやろう?毎日イレギュラーなことばかり。何をしてもうまくいかない、すんなり幼稚園や小学校に行ってくれない、うちの子だけどうしてそんなに泣き叫ぶのか?」

 一番大変だった長男の幼児期から小学校進学を迎えた頃。子育てを支援するNPO団体きのくに子どもNPOの子育てひろばに行った事がきっかけで、同NPOが主催するイベントのアート講師をする事に。そこで、アートセラピーを通じて心を開いていく子ども達を目の当たりにしたり、様々な性格や個性の大人や子ども達と活動するうちに、佐竹さん自身の子育ての悩みが軽くなっていったのだそうです。

 「一人で子育てするよりも、みんなでした方が気持ちが楽。私一人で子どもの一挙手一投足をずっと見ていると、出来ない事とかが浮き彫りになって、それが気になってしゃぁない。少しくらい見えないとこがある方が、力を抜いて子育てできたし、結果的に大きな視野で考えられたんよな。」
 「コミュニケーションの苦手な子ども達に、表現する事の楽しさを教えるのは特に良い経験になった。自分の可能性が開く感覚って言うんかな…それがわかった。それまでは子育てにいっぱいいっぱいだったけど、アート教室をする事で、私だけでなく子育てに悩むいろんな親達の気持ちに心が寄り添えた。親の心がこうでなくてはダメ、という枠が外れたし、自分が変われた。子ども達やいろんな人と出会って、助けてもらって変われたんよ。子どもは言葉にできない感情を持っているという事もわかって、その見えない部分を表現するツールとしてアートを知ってもらいたい、そういう気持が大きくなった。」

リノベーションスクールで町おこし

 今年2月には、新たな取り組み「リノベーションスクールin加太」に参加しました。加太でその土地柄を活かして、空き家になった建物を町おこしの基地としてリノベーションしようという試み。全国からリノベーションのプロや受講生が加太に集い、街を歩いたり地元の人にインタビューしながら、効果的なリノベーション方法を考え話し合いました。
(詳しくはこちらの記事をご覧ください。【第1回リノベーションスクール加太】)

 佐竹さんは、全国からの受講生がスムーズに加太の地元の人々に受け入れ入れてもらうための調整役という重役を担いました。地元の人の主張を尊敬しつつ、新しく入ってきた受講生がアイデアを出しやすいようにたくさんの人々の話を聞き、持ち前の明るさで地元の人々とリノベーションチームをまとめあげました。

佐竹幸さんのこれから

 コロナの影響で大勢で集まって何かをするのが難しい今、オンラインについて猛勉強中。人と繋がっていろいろ発信していきたいと考えています。今年5月の「未来の地球アートの輪プロジェクト」はじめ、今後の活動にも注目です。

 「アートセラピーいうても、セラピー顔ちゃうやろ!(笑)」と陽気に笑う佐竹さん。これからも人と人の境界線を薄める人でありたいと言います。

 「アートセラピーをして、心がほっこりするような柔らかいもんを提供してるんちゃうで(笑)。自分の気持ちを表現する機会を提供したいだけ。人と人の間に私はただ風穴を開けて、みんながコミュニケーションしやすい場を作りたいだけなんよ。(佐竹さん)」

 大きな鯛の被り物を被り、自分からパレードを先導する事で、自分もこうしていいんだという気持ちを後ろに続く子どもや大人にも知ってもらい、自分らしく自由に表現してもらいたい、そんな願いを込めてこれからも佐竹さんの活動は続きます。

~編集後記~
取材中、終始笑顔の絶えない佐竹さん。彼女が笑うと不思議な安心感に包まれます。けれどその笑顔の過去には自身の育児にまつわるたくさんの悩みがありました。そんな経験を乗り越えながら、人の心の痛みに寄り添おうとした事で、佐竹さんと“アート”がつながり、思わぬ波及を生み出しています。「まだまだやりたい事いっぱいで、これからも楽しみにしてて!」との事。これからも佐竹さんから目が離せません。
ライター:藤田有希子-福岡で地域情報番組のディレクターを経て、現在和歌山で子育て中。3子の等身大の子育て奮闘記を新聞等に寄稿している。