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和歌山観光・お出かけ

わかやま神社仏閣巡り | 藤白神社(海南市藤白)

熊野古道のスタート地点となる海南市の藤白神社。さまざまな歴史に彩られた境内をご案内します。

藤白神社は熊野古道の入り口「一の鳥居」

後鳥羽上皇、藤原定家、有間皇子、源義経…皆、藤白神社を訪れたとされる人たちです。
こんな歴史上の有名人物が、なぜ海南市に?
それは古来、藤白神社が熊野古道のスタート地点だったから。
藤白神社は熊野古道の「一の鳥居」として、古道を旅する人々の最初の拠点となった、格式の高い神社なのです。
現在とは異なり、当時、熊野古道を歩くにはたくさんの危険が伴いました。
熊野本宮大社までの無事を願うには神仏に頼るしかなく、神様に奉納するため、境内で相撲をとったり歌会を開いたりした記録が藤白神社には残っています。
特別な催事を行い、それを神様に捧げることで、道中のご加護を願ったのです。

後鳥羽上皇の催した「藤白王子和歌会」はことに有名で、同行した藤原定家が『熊野御幸記』に当時の様子を書き記しています。
藤白神社に残る「熊野懐紙」。<br>中央は後鳥羽上皇の真筆と考えられています。
藤白神社に残る「熊野懐紙」。
中央は後鳥羽上皇の真筆と考えられています。
藤白神社から住宅地の間を抜け、すぐに熊野古道へ。<br>今も古道歩きを体験できます。
藤白神社から住宅地の間を抜け、すぐに熊野古道へ。
今も古道歩きを体験できます。
早春には境内の枝垂桜が開花。
ソメイヨシノ満開の時期には花のトンネルができます。
春が深まると八重の山吹が美しいです。

藤白神社は子授け、安産、子育ての守護神

境内社「子守楠神社」
境内社「子守楠神社」
藤白神社で一番目を引くのは、千年を越える楠(くすのき)です。
境内には5本の千年楠があり、それぞれに5メートルから10メートルもの幹周りがあります。
幹は複雑に分かれ、どこまでが1本なのかわからなくなってしまうほど。
瑞々しい緑の光が届く木の下に立っていると、たくさんのパワーをいただいた気持ちになります。

この楠がご神体となっているのが境内社「子守楠神社(こもりくすのきじんじゃ)」です。
ご神木の楠は「子守の楠神(くすがみ)さん」として人々に親しまれています。
また、和歌山では昔から子供の名前に「楠」を入れると丈夫に育って出世する、と言われていたとのこと。
世界的な博物学者・南方熊楠も藤白神社の楠から名前をいただいたそうです。
初夏の藤白神社には、楠が盛り上がっています。
複雑に分かれた楠の幹。
ぜひご神木のパワーをいただきたいですね!

藤白坂で処刑された、有間皇子の願い

境内社「有間皇子神社」
境内社「有間皇子神社」
藤白神社の境内には、天皇の座をめぐる政争に巻き込まれた悲劇の皇子・有間皇子をお祀りする「有間皇子神社」があります。
今から約1300年前のこと、天皇の座を狙う中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)の謀略によって、有間皇子は藤白神社のすぐ近くにある「藤白坂」で処刑されました。
この時、有間皇子はわずか19歳。
「このような不幸は自分だけでよい、若者は己の生命を精一杯生きてほしい、と皇子の魂はきっとそう願っている。」
有間皇子を偲ぶ方々がそのように思い創建されたのが「有間皇子神社」です。
祠は緑に包まれ、すがすがしいご神気に満ちています。
有間皇子の歌碑も、祠の近くに建てられています。

熊野の神様が仏様に変身!貴重な熊野本地仏

藤白王子権現本堂
藤白王子権現本堂
たとえばお寺の境内に神社の鳥居があったり、神社なのにお寺のようにローソクを献じる場があったり、神社とお寺の様式が一緒になっている場は意外に多いものです。
古い時代、仏教が日本に渡って来た時、日本ではすでに伊弉諾尊(いざなぎのみこと)や
伊弉冉尊(いざなみのみこと)、天照大神(あまてらすおおみかみ)などの神様をお祀りしていました。
でも、日本人は独特の発想で仏教の仏様を受け入れたのです。
「ありがたい仏様は、きっと神様が変身したものに違いない。だから神様仏様、どちらも大切にお祀りしよう。」
熊野三山の神様も、仏様に変身したとされる姿で今も藤白神社にお祀りされています。
それが「熊野
本地仏」と呼ばれる仏様です。
千手観音菩薩
実は熊野那智大社の「熊野夫須美大神」が変身した姿だとされています。



阿弥陀如来
実は熊野本宮大社の「
家都美御子大神」が変身した姿だとされています。
薬師如来
実は熊野速玉大社の「熊野速玉大神」が変身した姿だとされています。
「神仏習合」として一緒に祀られていた神様と仏様ですが、明治時代、「廃仏毀釈」の令が下され、強制的に寺院と神社は分離させられることとなりました。
その時、多くの貴重な仏像が壊されたと言われています。
藤白神社ではこの三体の仏像を隠したり言い逃れをしたりしながら、長い年月、守り続けました。
熊野三山の本地仏が三体とも残っているのは藤白神社だけなのです。

藤白神社は「鈴木」さん発祥の地

藤白神社では鈴木さんを歓迎しています。
藤白神社では鈴木さんを歓迎しています。
在りし日の「鈴木屋敷」。
在りし日の「鈴木屋敷」。
全国に数多くおられる「鈴木」姓。
その発祥の地とされる、「鈴木屋敷」も藤白神社の神域に建っていました。
残念ながら現在、老朽化のため建物は解体され、2021年の修復完成予定を目指して工事が進められています。

源義経の家来、鈴木三郎重家と亀井六郎重清の兄弟は藤白の鈴木家の出身で、義経がこの地を訪れた際に弓を立てて修行したという松の古木「義経弓立松」も鈴木屋敷に残っています。

藤白神社のお守り

藤白神社には、ここでしか手に入らないお守りがあります。
一つは「ご縁をつなぐ」とされるナギの葉のお守り。
境内のご神木・ナギの葉を使い、藤白神社で手作りされているとのこと。
恋愛や縁談成就だけではなく、仕事のご縁や人間関係さまざまなご縁にご利益があるそうです。
(求める方が多いとのことで売り切れていて、写真に撮れませんでした。)
もう一つは「千年楠御守」。
境内のご神木・千年楠の板が入っており、千年楠の力を分けていただけるお守りです。
他にも「カラス文字」で書かれた護符「藤白権現熊野牛王神符(ふじしろごんげんくまのごおうしんぷ)は他では手に入らないものです。
参拝の際にはぜひ、授与所をご覧くださいね。

藤白神社の御朱印

藤白神社では授与所で御朱印がいただけます。
御朱印は参拝の証となる大切なものです。
ノートやメモ帳等ではなく、きちんと御朱印帳を用意することをお勧めします。

藤白神社の所在地・交通機関

藤白神社
【住所】     和歌山県海南市藤白466
【電話】      073-482-1123
【駐車場】    12台程度(無料)
【交通機関】   JR海南駅から徒歩15分
 
*藤白神社から海南市下津町まで、今も熊野古道を歩くことができます。
詳しくはこちら→「春の自然を満喫!熊野古道ちょっと歩き」

【真柴みこと】
息子二人の子育てを終えてから、フリーライターとして修業中。
写真と神社仏閣、自然の生き物が好きで、カメラを手に和歌山を駆け回っています。
Instagram  028mikoto

2019/04/11