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ママタイムズ

どう伝えたらいい?子どもに性教育「性」の伝え方

2月7日(月)Zoom開催された、和歌山市思春期講演会 『子どもに「性」をどう伝えたらいいの?そんな疑問に答えます!』に参加させて頂きました!

2022/04/07

『子どもに性教育してる?』
インスタグラムを見ていたとき、『子どもに性教育してる?』とシンプルな文字だけ書かれた投稿に、ふと目が留まりました。その投稿には、幼児から読める性に関する絵本や、保護者が性教育を学べる本の紹介がされていました。『え!こんな小さいうちから性教育するの!?』と驚き、同時に…『子どもに性教育ってどうやってするの?』『いつから始めたらいいの?』など、そんな疑問が沸々と湧いていきました。そんな矢先、和歌山思春期講演会《 子どもに「性」をどう伝えたらいいの? そんな疑問に答えます!》の講演会がZoom開催されると知り、『これは是非お話を聞かなくては!』と強く思い参加させて頂きました!

和歌山市思春期講演会 『子どもに「性」をどう伝えたらいいの?そんな疑問に答えます!』

〈講師〉 
NPO法人 ピルコン理事長 
染矢 明日香 先生
性の健康啓発を行うNPO法人ピルコン理事長。
中高生や保護者、教育関係者向けの性教育講座や情報発信の他、政策提言や海外の性教育動画Amazeの日本語翻訳プロジェクトの統括も行う。NHKやTBS、朝日新聞、読売新聞、日経新聞などの大手メディアにも数多く出演・掲載。著書に『マンガでわかる オトコの子の「性」』。
(講師写真・紹介文の出典:和歌山市保健対策課報道資料)

染矢先生のお話

あなたはどんな性教育を受けましたか?「日本の性教育の現状」

日本の学校の性教育では「人の受精の過程・妊娠の経過は取り扱わない」と、学習指導要領に記載されていて、特に中学生以下の子どもたちには、性交や避妊などの内容、性に関する心の変化や関係性など、踏み込んだ性の教育が難しく、また家庭の中でも“性の話”はしづらい雰囲気。今の大人に『あなたはどんな性教育をうけましたか?』と質問すると、『覚えていない』という意見が多く、日本の性教育の現状が見えてきます…

世界と日本の性教育を比べてみると

~世界と日本の性教育の比較~

 国際セクシュアリティ
教育ガイダンス(※1)
日本
性教育で行う内容の最低基準生物や健康の科目を中心にカリキュラム化学習指導要領に基づく
性教育の年平均時間と学習年齢12~20時間
5歳から18歳以上の年齢層で何度も繰り返し学ぶ
3時間(中学生の場合)
小学校3年生から高校生まで
性教育の内容生殖に限らず、人との関係性、ジェンダーや権利など幅広い「包括的セクシュアリティ教育」(包括的性教育)を学ぶ性交・妊娠の学習内容は取り扱わないとするはどめ規定がある
比較表参考文献:「教科書に見る世界の性教育」編著/橋本 紀子・池谷 壽夫・田代 美江子(かもがわ出版)
 
(※1) 国際セクシュアリティ教育ガイダンス…国連教育科学文化機関(ユネスコ)が2009年、各国の研究成果を踏まえ、世界保健機関(WHO)などと協力して発表した性教育の指針。

上記の比較表をみると…
日本の性教育は時間・内容ともに十分とはいえず、世界から遅れをとっているということが分かります

性教育不足と「性」へのタブー視による問題。SNSでの被害も!

性教育が不足し、「性」に関することは、どこか触れてはいけない、公にするのもはばかられる日本社会。そんな「性」へのタブー視により、予期しない妊娠中絶性感染症性被害など、様々な性に関わる問題が起こっています。年間約20万件に及ぶ中絶手術が行われ、10代の中絶はその10%に上ります。(※1)加えて性経験のある高校生の10人に1人が、クラミジアなどの性感染症にかかっていることも分かっています。(※2)
そうした、子どもたちの性情報を得る場は、簡単に性情報へアクセスができてしまう、インターネットです。性について興味を持ち、知りたいと思うことは自然な感情ですが、そこで得られる情報は、かなり“質の悪い”偏った性情報なのです。
さらに、今や生活の一部となりつつあるSNSでの性被害は近年増加傾向にあります。

(※1)厚生労働省「人工妊娠中絶件数及び実施率の年次推移」
(※2)厚生労働省「年齢(5歳階級)別にみた性感染症(STD) 報告数の年次推移」

幼少期からの性教育には沢山のメリットが!

幼い頃から性教育をするというと、“寝た子を起こす”と思われがちですが…。それは全くの反対!
適切な包括的セクシュアリティ教育(包括的性教育)を受けることで、性行動が慎重になり、自己肯定感を上げることにつながると、研究結果で分かっています。性の健康や権利への知識が豊富になると、コンドームを使用するなどの選択肢が取れるようになり、HIVなどの性感染症の感染、望まない妊娠の抑制につながると明らかになっています。また、包括的セクシュアリティ教育では、人との関係性、ジェンダーや権利などを幅広く学ぶので、偏った性情報が入ってきても慎重に判断し、自分も相手も尊重できる心を養えます。そしてそれが、『自分が自分らしくあっていいんだ』という自己理解へとつながり、人生の選択肢を広げることになるのです。

家庭でできる包括的セクシュアリティ教育

子どもと性を学ぶときに親が大切にしたいこと


1、肯定的に接する
性に関するトラブルを否定したり怒ったりしないことが大切です。子どもから、性に関することを質問されたときに、「そんな話をこんな所でしないの!」とか、「どこでそんな言葉を覚えたの?!」などと責めたりすると、子ども自身、『これ(性に関すること)は聞いてはいけないことなんだ、興味を持ってはいけないことなんだ』と感じ、性へのタブー感ができてしまいます。そうならない為に、性に興味を持つことは自然なことで、性を学ぶことは人生を豊かにすることに繋がっていくという肯定的な意識を持つことが大切です。たとえ、自信の持てる答えが出せなかったとしても、まずは性について話しやすい関係を作ると、子どもが悩んだ時に、親が信頼できる情報源安心して相談ができる存在になれます。

2、科学的に伝える
子どもが分かるやさしい言葉を心掛けて、ごまかしたりせず、科学的に正確な情報に基づき話します。

3、子どもがどう考えるかを大切に
一方的に教えるだけではなく、子どもの考えを聞き、受け止め、性についての多様な考えや価値観があることを伝えましょう。自分の考えや他人の考えを大切にすることで、自己決定と相手への理解と尊重につながります。

4、生活の中での積み重ねが大切
性教育は、「一度すれば終わり」ではなく、生活の中で様々なテーマを繰り返し行っていきます。初めから完璧を目指さなければできないわけではなく、もし子どもへの答え方が思い浮かばないときも、次に伝えるチャンスとして生かし、親も一緒に学び考えていく姿勢が大切です。

子供にどう伝える?性のこと

生涯を通じて性は幅広く学ぶものですが、子供や親からよくある疑問に沿って、それぞれの伝え方のポイントをご紹介します!
乳幼児期
乳幼児期は【プライベートゾーン】のルールを伝え始めるには最適な時期です。『あなたの身体はすべて大事』『特に、ここの部分は特別大事だからパンツや服で守っているんだよ』と伝えると子どもはポジティブにとらえられ、スムーズに理解できます!
『怖いおじさんがいるかもしれないから…』などと伝えたりすることもあるかもしれませんが、そこばかりが強調されると、子どもは恐怖心を抱きかねません。また、見知らぬ人からだけではなく、身近な人から子どもが性被害に遭うこともあります。

プライベートゾーンのルール

水着で隠された部分と口は
“プライベートゾーン”
◇あなたの許可なくさわらせたり見せたりしてはいけないあなただけの大事なところで、汚いところ、恥ずかしいところではない。

◇プライベートゾーンに関わる言葉や行動で、他の人を嫌な気持ちにさせてはいけない。

◇一人でいるときは、自分のプライベートゾーンをさわったり見たり自由にしてもよい。

◇プライベートゾーンを勝手にさわられそうになったり、見られそうになったら、①「いやだ」「やめて」と言う ②逃げる ③信頼できる大人に話す。
※プライベートゾーンに限らず、同意のない触れ合いは拒否してよいと伝える。また、たとえプライベートゾーンを勝手にさわられたり見たりされたり、強くいやだと言えなくても、その人のせいではなく、許可なくそうした人が悪い。という点を伝えることも大切です。
\\ワンポイントアドバイス//
 
ルールでは“一人でいるときは、自分で性器を触るのは自由”としていますが、実際に触っている子どもに、どんな風に声掛けをしたらよいのか、悩まれる保護者の方も多いと思われます。触る事自体は叱らなくても、『人前で触ると、見た人がちょっと嫌な気持ちになるかもしれないよ』『ばい菌がついた手で触ると、痛くなったりすることもあるから、清潔な手で、一人でいる時にやさしく触ろうね』という声掛けが必要です。また、指しゃぶりと同じで、不安や緊張を和らげるために触っている場合もあるので、『なにか嫌なことがあったの?どうかしたの?』と、子どもに寄り添ってあげることも大切です。

赤ちゃんはどこからくるの?と聞かれたら…

『赤ちゃんはどこからくるの?』と子どもに聞かれたら、まず、どんなことに疑問をもって、どんなことを知りたいのか、子ども自身はどう考えるのか、子どもの興味に沿って話し合い、『いいところに気がついたね』と、前向きに受け止めてあげると、安心して話せる関係が築けます。生殖に関する内容を話しづらい方は、絵本がおすすめです!子どもたちが親しみやすい絵本の中で性が学べるので、性へのポジティブな感情に結びつきます!
〇プライベートゾーンを教える時におすすめの絵本
「だいじ だいじ どーこだ?」
著/遠見才希子 絵/川原瑞丸 (大泉出版)
〇生殖に関する事を教える時におすすめの絵本
「あっ!そうなんだ!性と生 用事・小学生そしておとなへ」
著/浅井 春夫・北山 ひと美・中野 久恵・星野 恵 ・安達 倭雅子 絵/勝部 真規子 (エイデル研究所)
\\ワンポイントアドバイス//

もし、子どもから『パパとママは赤ちゃんつくるの?』『子ども2人いるから2回性行為したの?』など、答えに難しい質問をされた時は、『この話は、パパとママに関する大事なことだから話さないでおくね』と、あえて答えないという選択肢もありです。“プライベートなことは話さない”と、線を引いて接してあげると、子ども自身も“プライベートなことは大切なこと”と、認識でき尊重する心が育ちます。
児童期・思春期
個人差はありますが、からだの性が女の子は【初経】(初めての月経)、からだの性が男の子は【精通】(初めての射精)が始まります。それは“大人のからだに近づいている成長の証”です。下着についてしまった時の洗い方や、生理で身体がつらい時は、ピルや産婦人科の受診・治療ができるということを伝えたり、ポジティブに受け止められるよう、家庭でのサポートが必要になってきます。

多様性の尊重

成長につれて、身体の性的な部分や、自分や他者、性欲への関心など深く進んでいくこともありますが、性へのあり方には個人差があり多様なものです。
同性を好きになる恋愛感情や性欲がわかない性別に違和感がある(幼少期からあることもあります)、様々なあり方があり、それは自然なことです。その人なりの性のあり方を大切にし、尊重していくことが大切です。

自分を大切に、自分らしく生きる、相手を尊重する

子どもが悩んだ時に相談できる大人が、そばにいて受け止めてくれる。そういった存在がいるだけでも、子どもは心強く感じます。普段から話し合え、信頼できる関係を築ける環境を作っていくこと。また、子ども達の選択を尊重できる、そして子ども自身が選択できるように、サポートをしていくことが大人、社会の責任だと考えます。   
 
(編集協力:染矢 明日香)

・・・編集後記・・・
 
性教育と聞くと、なんだかドギマギしたり、身構えてしまったり…。ましてや性の話となると、まるで“呪いの呪文”でも唱えるみたいに、良からぬことを口にしているのでは…など。性へのイメージは、“ネガティブ!”そのものでした。
今回、染矢先生の講演会に参加させて頂き、そのネガティブなイメージはガラリと変わりました!性の話をするって“卑猥”とか“言いにくい”とか“気まずい”とか…そうではないんだ!オープンにしていいんだ!と気付かされました。染矢先生が講演会の中で、折に触れて、『性に興味を持つことは自然なこと』と仰られていたのが、とても印象的でした。そう!自然なことなのです!
世界から遅れをとる日本の性教育。性へのタブー視はなくなりません…。そんな日本社会が、性に関する事で、悩み、苦しみ、もがいている子どもたちを蝕み続けているのは事実です。子どもたちのすぐそばにいる私たち大人が、躊躇せず性への関心を持ち、正しい知識を学ぶ。そして、なにより“一番の拠り所”となれるよう、まずは私たちから変化のための行動を!より良い未来へと繫げていきましょう。 
 
まいぷれ編集部 山﨑