和歌山でキラリと輝く活動をされている方を紹介する「キラリ☆和歌山人」。今回は、和歌山の農家さんが作るこだわりの加工品の販売や、併設カフェを経営されている「くくたち」の正田さんを取材してきました。お店を立ち上げる経緯から和歌山の農業の未来まで、たくさん話していただきました！

和歌山市出口にあるお店『くくたち』。カブのロゴが特徴的なこのお店は、和歌山のこだわり農家さんが作った加工品の販売やカフェだけでなく、定期マルシェやミニお話会など、和歌山の農家さんのこだわった商品に触れることができる場所になります。そのお店を経営しているのが、正田明日香さんです。

ーー「くくたち」では農家さんの加工品を販売されていますが、農業に興味を持ったきっかけは？

就職で電気部品メーカーにいたのですが、仕事の大変さに会社の同期が疲弊している様子が見られ、「会社」について疑問を持ち始めました。その時、休憩中に会社の窓から見える田んぼの風景から季節の変化を感じられたことと、もともと大学で環境について研究していたこともあり、改めて「農業」に興味を持つようになりました。

ーーそうなんですね！滋賀でいらっしゃったのに、なぜ和歌山に帰って来てお店を立ち上げようと思ったんですか？

滋賀県は、昔から琵琶湖の自然やその近くの景観を守ろうとしている一般市民の意識があり、活動も多かったんですね。またその意識が農業にもあり、農家さんを応援しようとする意識が高かった地域でした。一方「和歌山」といえば、「梅」や「みかん」などと言われるぐらい有名な名産品があるのに、なぜ滋賀のような盛り上がりがないんだろう？もっと発信できることがあるのではないかと思い、帰ってきました。

ーーさまざまな加工品を売られていると思うんですが、和歌山の農業について正田さん自身がお考えになることはありますか？

和歌山は南北に広く、地形や気候に富んでいて、いろんなものが作られ始めてきています。今では、「パイナップル以外は作れないものはない」と言われるほど何でも作れるようになってきています。

ーー初めて知りました！そんなに色んなものが作れられているんですね！

そうなんですよ。あと山椒は日本で一番生産されていたり、鰹節の発祥地になっているのに、なかなか知るきっかけがなくて、「和歌山は何もない」と言われることが多いんですね。お客さんに説明すると、「そうやったんや！」と驚かれることも多いので、もっと知ってもらえるきっかけが増えればいいのになと思います。例えば、和歌山のお茶の三大生産地は白浜、那智、本宮と言われていて、お客さんに那智の紅茶を飲んでもらうと、評判が良かったんですね。このように、「食」を通して和歌山を再発見してもらうことが大切で、このような機会が増えると、地域愛やアイデンティティにつながるのだと思います。

ーー素敵な商品がたくさん置かれていますが、商品はどうやって仕入れていますか？

始めた当初は知り合いがいなかったので、和歌山にあるさまざまな道の駅を訪れ、自分が気になった商品を作っている農家さんや作り手さんに直接手紙を送っていました。そこで返事が来た方に直接お会いして商品を仕入れていました。最初は10件ほどでしたが、今では農家さんの紹介もあり、50件ほどの農家さんや作り手さんから仕入れています。

ーーすごいですね！商品を選ぶポイントはありますか？

まず、美味しいことですね。あとは「本物」かどうかですね。作り方や製法にこだわっていることや添加物が入っていないこと、品質として安心安全なこと、そして生産者さんの顔の見える商品であることですかね。

ーーそうなんですね！たくさん商品がある中で、オススメの商品はございますか？

一個にしぼることはできないですね..。
農家さんと直接お会いして商品を仕入れているということもあり、商品を見ると農家さんや作り手さんの素敵な顔や会話が思い出されるので、すべてオススメしたい商品です。

ーーお店以外にも月に一回マルシェを行われているのですよね！内容について教えていただきたいです。

毎月第１日曜に、うちで取り扱っている農家さんや作り手さん3、4軒の作り手さんに来ていただきますが、ミニお話会はそのうちに１軒の方にスポットを当てて話していただいています。
少し前に商品の偽装などが問題になりましたよね。この問題は、近年食べる人と作る人との距離が離れていることが原因だと思っています。だから、うちでは月に一回、店の前を作り手と食べる人の「交流の場」として提供しています。こうやって、お客さんと農家さんがコミュニケーションをとることで、農家さんには実際に食材を食べている人の声が直接届きますし、お客さんも農家さんの素敵な人柄を知れるので、お互いにとって良い機会になっていると思います。

ーー農家さんと話せる機会があるのはとても嬉しいことですね！実際にマルシェではどんなお話をされていますか？

お客さんが農家さんに質問していることが多いですね。具体的に「どういった場所でどういう風に栽培されているのか」と農家さんの農地自体に興味を持つ人がいたり、「実際に野菜を育てるにはどうすればいいのか」とアドバイスを聞いていた人もいます。販売している加工品の使い方についてなど、色んな話をされていますね。
また、店内ではマルシェに参加されている農家さんの中から1人お呼びし、30分間のお話会もしてもらっています。そこでは、作物の背景や商品のこだわり、そもそも作物がどうやって作られているのか、昔と現代の食に関する違いについて話されています。

ーーそうなんですね！私もお話聞いてみたいです！実際にお話聞いてから農園に行っているお客さんはいらっしゃいますか？

はい。実際にお話を聞いてから行きたいというお客さんも多いです。中でも、プロの料理人やパティシエの方は農園に訪れているようです。

ーーこれから和歌山の農業はどういう未来になってほしいですか？

和歌山は串本のように南国みたいに暖かくなる地域もあれば、高野山のように冬は雪国のように寒くなる地域もあり、地形や気候に富んでいることが特徴的です。だからこそ、「パイナップル以外はすべて作ることができる」といわれている和歌山で、何か面白い農業をして自給率をあげることができるのではないかと思っています。
また現在は、県外に進学や就職で家族に継がせたくないという理由から、農家の人口が減少している現状にありますが、農家さんが農業だけで生活できるように、私たち食べる側もきちんと適正な値段で食材を買えるような未来を望んでいます。

ーー今後、お店としてはどういう方針でやっていきたいですか？

お店の目的として、もともと物を売ることが目的ではなくて、農家さんと食べる人を結ぶ場でマルシェをしたり、農業の可能性を広げるためにお店を開いたので、そこは変わらずやっていきたいですね。

ーーマルシェなど現在開催されているイベント以外にも、今後新たなイベントをお考えですか？

今後は、農家さんの畑や牧場、ジビエ、調味料メーカーなどの見学ツアーをやっていきたいと考えています。現在では、マルシェやイベントで実際にお会いして話す機会はあります。しかし、実際農作物がどう作られているのか、現場でしか感じられないこともあるので、直接農園に訪れて、「農業」というものを感じてもらいたいと思います。

――最後にメッセージを一言お願いします。

「和歌山の美味しいものを食べてみたい」と思っている方に来ていただきたいです！
またお祝いのギフトやお土産も販売しておりますので、ぜひ気軽にお越しください。

くくたち

【住所】和歌山市出口甲賀丁38−2
【電話番号】073-460-8137
【営業時間】10:00〜18:00
【定休日】月、火、第2日曜、第4日曜