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キラリ☆和歌山人

紀州漆器の技術を受け継ぐ、未来へ!(1)

紀州漆器共同組合青年部の山家優一さん(山家漆器店)、町田智哉さん(町宗工芸)、野上祐人さん(野上木工株式会社)

2019/10/16

左から、野上祐人さん、山家優一さん、町田智哉さん
みなさんは、「紀州漆器」をご存知ですか?「漆(うるし)塗り」を想像される方も多いと思いますが、実は私達の身近にもたくさん漆器が使われているんです。
今回のキラリ☆和歌山人は、そんな紀州漆器の未来を担う、紀州漆器共同組合青年部を代表して、山家優一さん(山家漆器店)、町田智哉さん(町宗工芸)、野上祐人さん(野上木工)に紀州漆器の今とこれからをお話していただきました!

今回お話をお伺いした「紀州漆器協同組合青年部」のみなさんをご紹介!

山家優一さん(山家漆器店)

塗りの仕事以外にも営業・広報・EC(インターネット上の取引)など幅広く活躍されている山家さん。前職ミャンマーにも駐在されていた経験を活かし、ミャンマーやタイなど東南アジアなどの漆器に関する調査を行うなど、漆器業界の発展を模索されています。

町田智哉さん(町宗工芸)

塗りと言えば町田さん。町宗工芸4代目の紀州漆器若手塗り屋さんです。塗りの技術を受け継いでいこうという強い意志と、従来の漆器の概念にとらわれず塗りの技術を様々な分野で活かそうという意欲に溢れています。

野上祐人さん(野上木工株式会社)

ヤマヨタンバリンや和太鼓などの木製楽器の職人でありながら、会社の家具部門や介護用品部門の経営もされている野上さん。一つ一つ手間隙をかけて作られた楽器は、手に取ると音の良さや安全性など、技術の素晴らしさが伝わってきます。

座談会スタート!まず、紀州漆器協同組合青年部って?どんな人がどんな活動をしているんですか?

町田:青年部は、主に下駄市や漆器祭りのものづくり体験の開催や、市などから依頼を受けて塗る仕事をしています。
山家:わかりやすいところで言うと、海南駅の看板とか黒江小学校の校歌とか
町田:去年は亀川中学校の校歌も
山家:地域事業みたいな感じですね。普段自分達それぞれの会社ではしないようなことを組合が受けて青年部みんなで請け負っています。
まいぷれ:漆器組合ですが、青年部には野上さんのような木工の方もいらっしゃるんですね。
野上:漆器組合の中でも各製造の部門別に「塗料・紙器部会」や「成型部会」などがあり、うちは、漆器をぬる前の原型である木地(きじ)を作る「木地部会」寄りですね。
まいぷれ:なるほど。一つの製品には幾つかの工程があって、それぞれに携わる方が紀州漆器組合に入られているんですね。勉強不足ですいません…。
山家:プラスチック屋さんで漆器やっている人もいるし、逆に漆器にあまり携わっていない人もいます。
町田:45歳以下の人が入ってますね。

実は公表できないけれど、大きな企業やショップからの依頼で色々な仕事をされているんです!

まいぷれ:海南の黒江を中心に、先ほどの校歌や駅など、地元海南の方は目にする機会が多いと思うんですが、漆器を一般の方が“使いたいな”、“買いたいな”と思う要素がもう少しあってもいいと思うんです。探している方にちゃんとたどり着いていないもったいない感じがします。現在、漆器の魅力を知ってもらうための活動は青年部としてできていますか?
山家:青年部としては、あまり何にもしてないですね・・・。
野上:僕個人的には、正直そこが課題ですね。県の事業として広めていこうかとも思っています。
山家:自分達が何をしたいのかわかりやすく伝えていくことが本当に必要だと思います。ただ正直そこまで手が回っていないのが現状です。組合として出来ないのであれば、自治体としてやるのも手だし、個々でもやっていかないといけませんよね。
まいぷれ:今回も取材までに、みなさんのところの商品を知っておこうと思って調べたんですがあまり色々は出てこなくて・・・。
山家:うちもそうですが、塗り屋は「これに塗ってください」という仕事には、企業的にプロデュースされているものや、どこかのお店で売るためのものが多いので、あまり公表できないですし、自分達の商品としては持っていないんです。塗り屋は、色をつける、質感を作る、塗りは提案できますが、形をつくるのはなかなかハードルが高いんです。
町田:○○のこれとか、大手インテリアショップの○○とか本当はいろいろやっています。昔から漆器は分業でやっていて、僕らはずっと塗りをやっていますが、そこの枠を外れて木地もやって、塗りもやってというのは、人手もないし難しい部分ですね。もちろんアリだと思いますが。
山家:自社ブランドとして確立するために、新しい魅せ方としてKISHU+という新しいブランドで漆器の魅せ方を提案している事業も行っています。
(※1)KISHU+
従来の漆器の在り方に囚われない手法を積極的に取り入れ、KISHU+は紀州漆器産地4社が、協同し立ち上げた漆器のブランド。山家漆器店も参加されています。
手仕事を尊重しながらも、新たな技術を取り入れて今までにない漆器のアイテムが誕生しています。

漆器組合の職人さん一人一人の仕事を紹介できたら面白いですよね!

まいぷれ:今後やってみたいと思うことはありますか?
山家:漆器組合の方個人個人ではインスタやFacebookなどをやっていたりしますが、組合で各社を紹介できればと思いますね。
町田:各社がこんなことやってるんや!とわかるような
山家:例えば、組合ナンバー001の○○さんの会社に訪問して、○○さんはこんなことやってます。こんなもの作ってます。全員を紹介できたらめっちゃ面白いですよね。
まいぷれ:面白いし、ぜひ知りたいです!職人さんカタログですね。
山家:100社以上あるし、職人と従業員合せても200人以上。
町田:ただ、僕らの年代はそんなことないですけど、職人さんの中には昔からの技術を盗まれたくないと思う人も多いので、お客さん側からは面白いと思ってもらえると思うけれど、なかなか全社を取材するのは難しいかな。
野上:少しずつ変わってきてはいるけれど、まだそういう傾向はありますね。
まいぷれ:商品と作っている方や会社の紹介だけでもあるといいですよね。
山家:全くないんですよ。作ってください笑

職人さんの高齢化と後継者問題、現状をお聞きしました。

まいぷれ:職人さんは高齢の方も多いと思いますが、若い方は入ってこられてますか?
山家:29歳ぐらいの子はいますね。29でもかなり若いです。平均年齢60超えてるんちゃう?
町田:超えてると思う。70代の人も結構いてるし。
山家:塗りで一番上手いって言われてる人でも70手前で。うちの社長も今年68歳。
町田:10年経ったら職人さん引退して半分以下になるかも
山家:年齢とともに、どうしても目が悪くなったり、数こなせなくなるじゃないですか。
町田:塗る人がいなくなったらそこで終わるから
まいぷれ:求人などは出されていますか?
山家:求人はちょこちょこ出してますね。
町田:ただ雇わなあかんけど、うちは塗装ブース3台あってすでに3人塗ってるんですよ。そこで1人雇うとなると、環境整えないといけない。経験ある人が入ってくる事はめったにないので、教えてものになるまで時間も掛かりますし、長期で働いてもらえないと困るし、難しいとこです。
山家:野上くんとこは人いてるんちゃうん?何人くらい?
野上:8人。人は多いんですけど、うち塗装は外部に発注してるんで、塗ってくれるところが今後減ってしまうと困りますよね。塗り以外のうちでやっている製作も今の8人で回してるし、自社で塗りができればいいんですけど、塗りを自分のところでするとなると一から整えないといけないのでかなり難しいです。

紀州漆器組合青年部若手として今後やっていきたいこと

企業やいろんな方と一緒に商品づくりをしたい!

山家:商品づくりをする時、バイヤーさんやお客様に「この色なら売れる」とか、違うバリエーションを提案することがありますが、こちら発信が多いんです。
企業やマーケットから提案してもらえたら新しいものができて面白いと思いますし、組合がもっと連携して「この商品なら欲しい」という物を作っていきたいです。
大学生や主婦の方、子育て中のママ、インスタグラマーの方などと一緒にコラボして商品開発するのもいいですね。

「紀州漆器」をもっとブランディングしていきたい!

山家:依頼があって一緒に仕事させてもらっている企業はたくさんあるんです。でもそのほとんどが公表できない仕事で。
町田:こんな仕事やってるというのも言えないし、塗っている現場の写真もNGなんです。
野上:うちも特殊なつながりで入ってくる依頼があって言えないことも多いですね。
まいぷれ:記事では言えないですが、さっき教えていただいただけでもすごく有名な企業さんやお店のお仕事をされていて、「あれもそうなん!?」ってきっとみなさんビックリされると思うので、言えないのがとても残念です。
山家:そういう面でも紀州漆器のブランディングは絶対やっていきたいです。今冶タオルのように、商品にタグが付いているだけで安心感があるような。紀州漆器のことを知って頂いて、信頼を得て、もっともっと紀州漆器の価値を上げていきたいですね。

最後に山家さん、町田さん、野上さんそれぞれの今後の希望をお聞かせください!

山家さん

まだ、塗りの価値が良くわかっていなくて、後継者が育たない、人がいないって言うのは嘘で、時給がもっと高かったり、給料を上げれば人は入ってくるんです。ただ、そのためには、塗りの仕事の価値を上げないといけないし、売り上げを伸ばす仕事と、見せる仕事を両立させていかないといけません。見せる仕事はメディア、他には漆器を普段置けやん所に置こうとしていて、例えば東京とかお洒落なお店とか。置けたら、売れても売れなくてもいいんです。「紀州漆器ってあるんだ」、「KISHU+の産地なんだ」とまず知ってもらいたいです。そうすれば言えるような仕事が増えてくると思うので。商社とかからの注文があって、安くしてって言われますが、一方で僕が今やっている梅酒の漆器製の箱やケーキ屋さのケーキトレイなど地元のお店からは「そんな金額でいいんですか」って、そこのギャップを埋めていければいいですね。

町田さん

一番大事なのは、うちの場合はやはり人です。そしてしっかり塗って行く環境を作っていくことが大事です。後は少しずつ、「自分のとこの塗り」と言えるようなものが出来てきたらいいなと思います。先代から受け継いでやっていくのは大変な事ですが、絶対に残していきたいです。
あとは、従来の漆器にあるようなお盆や椀だけでなく、プラスチックや鉄、ガラスなど意外だなと思うような素材や用途にも漆器の塗りの技法を使っていけたらいいですね。
他の業種の方から「これに塗れる?」と言っていただければ新しいものにも挑戦していきたいです。

野上さん

大きく二つあって、生産を継続していく上で、今いる人のことも、新しく人を入れることも考えていかないといけないと思います。職人さん達はまだ若いですけど、40~50代になりつつあるので、1人新しく入れて育てていくとして、うちがやってる仕事はすごく特殊なので、10年ぺースで育てていかないといけません。新しい人を入れて生産を強化、継続していきたい一方で、少子化でうちの楽器の需要が減ってきているという現実。うちの商品はありがたいことにブランドで選んでいただいていますが、国内産で素材にもこだわり、一つ一つほぼ手作業のため高いんです。長期的な面で、うちの魅力を出していきたいと今模策中です。

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