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キラリ☆和歌山人

あるものを残し、時代を超える。

Proyect G Oficina - 源じろう計画事務所 代表取締役 半田雅義さん

2016/09/26

和歌山でキラリと輝く活動をされている方を紹介する「キラリ☆和歌山人」。今回は、和歌山市内で「Bar No.11(バール・ヌメロオンセ)」や「WAKAYA津屋」など、人気店の空間プロデュースと経営を手がける「源じろうさん」こと半田雅義さんを取材してきました。
現在「源じろうさんのお店」といえば5店舗。和歌山市内では和歌浦東にある「WAKAYA津屋」、11番丁にある「bar No.11(バール ヌメロオンセ)」、県立美術館内にある「BRING BOOK STORE(ブリングブックストア)」、そして有田市にある「rub luck cafe(ラブラックカフェ)」と岩出市根来にある「Casa De Cha 1472(カサデチャ1472)」です。今回はその中でも最も直近にオープンした「BRING BOOK STORE」で本日お話を聞かせていただきました。
(rub lack cafe ラブラックカフェ)
(rub lack cafe ラブラックカフェ)
(Bar No.11 バール ヌメロオンセ)
(Bar No.11 バール ヌメロオンセ)
――5店舗それぞれ個性があって、すごくかっこいいと思います。でも同じような雰囲気やデザインのお店ってないですね。

はい。「同じような作品はない」っていうのが大事で、毎回毎回違うからこそ、面白いんだと思います。別のものを作るからこそ、一生懸命、頭を振り絞るんです。

僕、実は「スタジオジブリ」の宮崎駿監督作品がとても大好きで、ファンなんです。そんな宮崎監督の作品はどれも作風が違って面白いですよね。そんなイメージで、同じものは一つも無くてさらに何度見ても面白い、「時代を超えて愛されている作品」っていうのはこういうことなのかと感じます。

――たしかにジブリ作品は時代を超えて色あせない映画ばかりですよね。

宮崎さんの「カリオストロの城」って1979年公開だけど、それでも未だに印象深くて忘れないし何度見ても面白いじゃないですか。僕の店もこうあって欲しいって思うんです。「源じろうの店、何度も来てしまうんだよね」と、思わず足が向いてしまうような、そんな店に。

――源じろうさんが思う「時代を超える」ためには、何が必要なんでしょう。

「今」や「流行」に流されないことです。そのために僕は「情報をあまり見ないようにする」という点を気をつけています。

――情報をあまり見ないようにする?

「流行」や「今」に流されると、その場だけの作品になりがちです。それではホンモノとは言えません。情報を知ったり見すぎたりすると無意識のうちに「流行」を取り入れてしまうんですよね。時代を超えるものをつくるために、僕はそういった所を気をつけるようにしています。

一人のおばあちゃんが、教えてくれたこと。

――源じろうさんのお店の古い家具や木材は、ご自身で集めているのですか?

店の中には自分で集めたものも、もちろんあります。ただ最近では、僕の活動を知ってくれている人や店に来てくれるお客様が「今度自分のお店(家)を取り壊すことになったから、要るものがあれば是非貰ってください」と声をかけてくれることが非常に多くなりました。色々といただいた木材や家具を使って店の一部として使用しています。

――活動を知ってお声がかかるって、すごいですね。

ありがたい話です。ただ、そうして家など取り壊される際に声をかけていただく方の多くは、ご両親を亡くされ、生まれ育った家を管理できずにやむなく手放す人が多いようです。つまり、大事な家の一部を使わせていただくわけですね。そのため、店にいただいた木材や家具を使わせてもらうことで、家はなくなっても店にくれば懐かしい思い出と会える、故郷に帰るキッカケを残しておける、そんな風に思っていただけるんじゃないかと思っています。

――お店をつくる上で、辛くなることはありますか?

負けそうになる瞬間ってやっぱり多いですね。僕が今行動していることや、これからしようとしていることは「日本人として別の方向を向いているんじゃないか」「果たして正解なのか」と考える時です。「物を残そう」とする僕の姿勢が、古いものは壊して新しいものを立てようとする日本人の考え方と少し違うのではないかなと負けそうになるんです。

――なるほど、その気持ちに負けずにいられたのはどうしてですか?

これは「WAKAYA津屋」をつくっていたとき、実際に聞いた話で。津屋の店をオープンする前、店を会場にして「紙の展覧会」を開いていました。ある日、近所のおばあちゃんが来てくれて、絵葉書を一枚買ってくれたんです。当時レジを担当したスタッフがおばあちゃんに「絵葉書買ってどうするの?」と尋ねると、「この絵葉書を先立った夫の仏壇に供えたいと思ってるんよ」と笑って答えたそうです。
(当時の展覧会の様子)
(当時の展覧会の様子)
よくよく話を聞くと、元々そのご夫婦は漁業組合で働いていたそうです。WAKAYA津屋の建物は元々は漁業組合の建物なので、ご夫婦は昔あの建物で毎日お仕事をされていたということになります。時が過ぎて、漁業組合が解散し、土地が売りに出され、日を重ねるごとに廃墟同然になる建物の姿におばあちゃんは心が苦しかったと。加えて、取り壊しの噂もあり、「いつかここも取り壊されるだろう」と思って不安だったそうです。


――思い出の場所が変わり果てた姿になるのは辛いですよね。

そうですよね。そんな時、「WAKAYA津屋」をつくる準備が始まり、取り壊されずに済む上に生まれ変わると分かってとても嬉しかったそうなんです。そのことを亡くなった旦那さんに教えたくて、絵葉書を1枚買って仏壇に供えようとそんな素敵な話を聞かせていただきました。

――とっても感動的なお話ですね!

この話を聞いて「あぁ、やっぱり僕のしていることは間違いじゃないんだ。この建物を残して欲しいと考える人がいる、この建物はこの場所にあるべきなんだ」と強く思いました。やはり場所やモノには、住んでいた人や使っていた人の思いが詰まっているんですね。
(WAKAYA津屋 改装前)
(WAKAYA津屋 改装前)
(WAKAYA津屋 改装後・現在)
(WAKAYA津屋 改装後・現在)

人に選ばれて、愛されるお店をつくるために。

――本日取材をさせていただいた、ここ「BRING BOOK STORE」はなぜ県立近代美術館の中だったんでしょう?

正に「タイミング」でした。この美術館の中のテナントに関しては、お声をかけていただいたことがきっかけでした。僕は、常にやりたいことが一杯あってその中で”出会ってしまった”“ぶつかってきた”“目の前に現れた”そんな風に一つ一つを縁だと思っています。だからこそ、自分の中で「チャレンジしてみよう」と思えました。
(BRING BOOK STORE ブリングブックストア)
(BRING BOOK STORE ブリングブックストア)
――BRING BOOK STOREはどういったカフェですか?

ここは、珈琲を飲みながら本が読める店です。今はまだ本の数が足りませんが将来は1万冊の本に囲まれる店を目指しています。そしてカフェを出たあとも、自分の愛読書と珈琲を持って美術館の噴水近くや近辺の公園などでゆっくりと過ごしてほしいと思っています。このBRING BOOK STOREで過ごす時間がお客様の「プラス」であってほしい。「学び」の時間であってほしい。そう考えて、本に囲まれたカフェをやろうと思ったわけです。

――1万冊ってすごいですね!どうして今回、「本」だったんでしょう。

この美術館は、元は和歌山大学教育学部の跡地でもあるんです。大学を思い浮かべた際に、構内で学生が本を読んでるシーンってとても自然だと考えました。何かを学んでる姿が普通なのでは、と。そこで出てきたのが本でした。「飲食をする」というのは決まっていたんですが、美味しいものをただ単に提供してそこだけで完結されて欲しくない。BRING BOOK STOREを利用したあとも美術館内を全体的に使えるような仕組みにしたいと思ったんです。

――美術館が建つ以前のことを踏まえて考えた上で、連想されたんですね。

何年も、何十年も残るものを作るには、その土地と対話し、歴史などを踏まえたうえで、過去と“かけ離れすぎない”ものを作るということだと思っています。毎回、街の人にとって本当に必要なのか、本当にこの場所で店を出すことは合っているんだろうか、など考えて作っています。これはどの店をつくるときにも言えることです。

――なるほど、何十回何百回と悩み考えながらお店を作っているんですね。

もちろんです。毎回毎回これでもかと頭を振り絞って、何ヶ月もかけて店を作ります。この先50年以上残る店になってほしいという気持ちからですね。そのためには“人に選ばれる店”でないと、と考えています。その地に長く残る店にするには、「人に選ばれる、人に愛される」というのはとても大事なことです。

――選ばれて、愛されて、残る店は確かに時代を超えるものになりますね!

はい。人に選ばれる“ホンモノ”の店作り、そして僕自身周りから「源じろうの店、次はいつできるんだろう」とかそんな期待をもってもらえるようになるのが目標です。なかでも、BRING BOOK STOREはまだ走り出したばかりで、これから本もどんどん増やしていく予定です。県民皆さんの憩いの場として使っていただけるよう、成長し続けます。

Proyect G Oficina - 源じろう計画事務所 ホームページ

編集後記

源じろうさんは、以前レポートした「第1回リノベーションまちづくり構想検討委員会」でスペシャルゲストとしてお話しされていました。会場全体を一瞬で惹きつけるそんな魅力あふれる方で、私もそんな源じろうさんに心を鷲づかみにされた1人でした! お話を進めるなかで、源じろうさんのホンモノを追い求める姿勢とお店づくりに対する熱い気持ちがあふれていて、とても感動しました。一軒の“お店”という場所を通じて、色んな人の思いを集めて一つの“作品”が出来る。「人に選ばれて、人に愛されるお店」、源じろうさんの次の作品が非常に楽しみです。