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キラリ☆和歌山人

沼丸晴彦さん:「和歌山児童合唱団」指揮者

2014/09/04

今回ご紹介するのは、ヨーロッパでも多くの賞を受賞し、
世界で活躍している「和歌山児童合唱団」の指揮者 沼丸晴彦さんです。

和歌山出身の沼丸さんが、児童合唱団を世界に通用するレベルへと育てられた経緯や、子どもたちへの思い、和歌山に関する音楽活動のお話などを伺いました。
沼丸晴彦(ぬままる はるひこ)さん<br>日本合唱指揮者協会理事・関西支部事務局長<br>和歌山県合唱連盟理事長
沼丸晴彦(ぬままる はるひこ)さん
日本合唱指揮者協会理事・関西支部事務局長
和歌山県合唱連盟理事長

---まず始めに、現在指揮者としてご活躍されている経緯を教えてください。
指揮者というと豊富な音楽の知識が必要とされるイメージですが、やはり音大などで勉強されたんでしょうか?


いえ、音大には行っていません、大学は理系でした。
幼い頃から、オルガンを習ったり高校生の頃はバンド活動をしたりと、ずっと音楽とは関わっていたんですが、大学進学時は音楽を職業にする気は無かったんです。
ですが、大学在学中にやはり音楽をしたいと思うようになりました。
そこで、指揮科を目指して指揮の実技はもちろん、音楽史や時代ごとのスタイルを勉強したり、声楽の先生について学んだりしました。
結局、受験することはなかったのですが、その際に基本的なスキルを身につけました。
「和歌山児童合唱団」の指揮を務める沼丸晴彦さん
「和歌山児童合唱団」の指揮を務める沼丸晴彦さん
---大学は県外のようですが、和歌山に戻られて合唱団の指揮をするようになったのですか?

そうですね。卒業後、和歌山の公務員となり現在も在職しています。
戻って仕事をしながら、初めは大人の合唱団の指揮をしていました。
高度なルネサンスやロマン派時代の曲を、より高い完成度で演奏することを団員に求めていました。
指導は、かなりスパルタだったと思います。今も厳しいですが(笑)


---そこから、なぜ児童合唱団を指揮されることになったのでしょうか?

和児童(和歌山児童合唱団)指揮者のオファーをお受けしたのは、私が30歳の時です。
実は、現・和児童会長の岩橋さんから「ヨーロッパで通用する児童合唱団を目指したいので指揮をして欲しい」と、ずっとオファーを受けていました。
ただ自分自身、大人の合唱を指揮したい思いがありましたし、子供を指導できるのか不安もありました。
なので、何年間かお断りしていたんです。


---そうなんですね。何かお受けになるきっかけがあったんですか?

しばらく続けるうちに、大人を指導することに限界を感じてきたんです。
若気の至りもあり、高い要求を求めるあまり団員への指導も難しくなっていました。
そんな折、児童合唱団の練習を見学させていただきました。
その際に、子供たちの素直さ・吸収力・柔軟性にとても魅力を感じたんです。
指導をすると、スポンジのようにどんどん吸収して成長していくんですよね。
出来上がった所から指導するのではなく、未完成な状態から一緒に作り上げていこうと思いお受けしました。
それから約23年くらいになります。


---なるほど、基礎から築いていくことが大事なんですね。
現在、見事ヨーロッパでも通用する児童合唱団になられましたが、どのように指導されたのでしょうか?


まず初めに、8年計画で子供たちを育てる企画書を提出しました。
指導計画を立て、年齢のサイクル的に4年×2の期間は必要だろうと算出しました。
そして、8年後にあたる1998年にイタリアで開催された「リヴァ・デル・ガルダ国際合唱コンクール」において『金賞』と『特別賞』を受賞したんです。
結果として目的を達成できた喜びはありましたが、それよりも合唱を通して子供たちが多くのことを得れたことが嬉しかったですね。
初めて海外に行った子もいましたし、現地の人たちとの交流もとてもいい経験になったと思います。
ヨーロッパなど海外公演は、演奏だけでなく交流など貴重な経験に
ヨーロッパなど海外公演は、演奏だけでなく交流など貴重な経験に
海外のコンクールでは魅せ方も重要で、大阪から振付師を呼んで指導することも
海外のコンクールでは魅せ方も重要で、大阪から振付師を呼んで指導することも
---それでは「和歌山児童合唱団」についてお聞かせください。
練習は週1回とのことですが、指導はすべて沼丸さんが担当されているんでしょうか?


そうですね。
基本的には私が行っており、卒業生がアシスタントとして指導に参加してくれています。
練習場所の和歌山市立伏虎中学校北別館
練習場所の和歌山市立伏虎中学校北別館
---大会での受賞歴などを拝見すると、練習量が少ないように感じるのですが?

そもそも、大会を目指して合唱している訳ではないんですよ。
子供たちが楽しむこと、音楽を通じて目標に向かって準備を整え、本番で実力を発揮する力をつけることが大事だと思っています。
なので、1度出た大会には出ないようにしています。
今年も結果を出さなければと、子供たちが変なプレッシャーを感じて、賞を取るための演奏になってしまうからです。
ただ、楽しむためにはスキルが必要です。技術が上がればその分表現が豊富になり楽しくなる。
ですから、指導は徹底して行います。厳しいですよ(笑)


---では、歌が得意じゃなくても入団することはできるのでしょうか?

もちろんです。小学校4年生までなら、どなたでも入団いただけます。
ヨーロッパでは普及している、ハンドサインという教育を取り入れており、何年かすると音階を取れるようになりますよ。


--すごいですね!私も入団しておきたかったです・・・
5月にドイツで行われたコンクールでも
「特別賞」を受賞し、ヨーロッパの審査員からも絶賛されたそうですが、宗教音楽など内容の難しいものをどうやって子供に指導しているのですか?

ラテン語の発音はもちろん、意味も理解して歌うように指導しています。
宗教音楽というと難しく聞こえますが、基本的に神様に向けた歌なので。
子供たちにも、神さまへの祈りを込めて歌うように伝えているんです。


---親御さんとしては、海外の演奏会へお子さんを参加させることに不安もあると思うのですが・・・

そうですね、不安もあるかと思いますが、とてもいい経験になると思います。
招待で行くことが多いので、滞在費用はかからないことが多いです。移動費のみ負担していただくことになります。
引率は、私と別に保護者2名ほど同行しますが、海外経験のある高学年の生徒が下の子を見る形で助け合っていますね。
和児童は今まで27回の海外公演を実施しています。

ドイツ演奏旅行(第27回海外公演)で「特別賞」を受賞
ドイツ演奏旅行(第27回海外公演)で「特別賞」を受賞
各地の演奏会に招待され、様々なメディアに取り上げられている
各地の演奏会に招待され、様々なメディアに取り上げられている
---合唱を通して、人としても成長できるような経験を沢山味わえそうですね。
それでは最後に、今後の目標や展望などがあればお聞かせください。


指揮者として、子供たちに最高の舞台を用意しつづけてあげたいと思います。
子供たちの音楽を最大限に引き出せた時が、私自身も楽しいし喜びを感じます。

また、日本を代表する国の歌を作りたいと思い、世界的な音楽家で友人でもある作曲家の松下耕氏に、和歌山の民謡を集めた「紀の国のこどもうた」を作っていただきました。
海外のコンクールでも演奏しますが、1番評価が高いんです。
今後も、和歌山の地域に密着した音楽を伝承し、広めていきたいと思っています。

さらに、合唱の世界は未だ閉鎖的なイメージが強いと思うので、色々な業界と関わりを持って、もっと扉を広く開けていきたいです。
児童合唱だけでなく、その為に今も水面下で色々と企画を進めているんですよ。
楽しみにしていてください。


---和歌山児童合唱団の活動はもちろん、沼丸さんのご活躍も益々拝見できそうですね!
本日は、お忙しい中ありがとうございました。

◆編集後記◆
音楽に対する勤勉さと情熱、また子供たちへの愛情を深く感じることができました。
児童合唱団で学ぶことは、音楽家にならない子供たちにも大きな影響を与えてくれそうです。
既成概念にとらわれない発想で、今後も色々なイベント開催もするそうなので楽しみですね。
和歌山が世界に誇る「和歌山児童合唱団」の歌声を、ぜひ皆さん聞きに出掛けましょう♪

和歌山児童合唱団 今後の活動予定

2014年11月2日(日)
和歌山市コーラスフェスティバル
和歌山市民会館大ホール
<指揮>沼丸晴彦

2014年11月22日(土)、24日(月祝) 15:00~
第483回大阪フィルハーモニー交響楽団定期演奏会
フェスティバルホール
曲目:マタイ受難曲
<指揮>ヘルムート・ヴィンシャーマン
和歌山児童合唱団

昭和33年誕生。現在に至るまで数多くの子供たちが活動に参加し、今も小学1年から高校3年までの約150名の子供たちが、弛まぬ練習を続け、国内外におけるさまざまな演奏会やコンクールに参加しています。

>>和歌山児童合唱団HPへ